子ども生きる力を

以前、「はなちゃんのみそ汁」という本が出版されました。

~33歳で亡くなった母が5歳の娘に残したのはみそ汁~

「私はガンになった後に娘を授かりました。だから、この子を残して死ななければなりません。だとすると、心残りがないように死ななければなりません。いつ別れが訪れるか分からない、私はこの子に何をしてあげられるのか?」「私がいなくなっても、この子なら大丈夫。そうなるために今できる事は…」

そこで母は、「ご飯を作って食べる」それが生きる力の根本と考え、4歳の娘を台所に立たせ、包丁を握られました。しかし、そのような時間は長く続かず、はなちゃんが料理を習始めて1年半後に母は天国に旅立ちました。

その後、はなちゃんは「顔を洗う、お祈り、犬の餌やり、散歩、手洗い、みそ汁づくり、朝ごはん、歯磨き、ピアノ、トイレ、保育園」を自分の仕事と決めました。さらに、夕食の買い出しにも行き、料理のレパートリーも増えました。また、亡き母への思いを「お母さんみたいに料理も作れて歌も歌える人、ハナミズキも最後まで歌えるようになりたい。お母さんが大好きな歌なんだから。」と綴っています。はなちゃんは11歳になり、毎朝鰹節を削り、みそ汁づくりをして、お父さんを二人で生活しています。

以前、奥州市の成人式の様子がTVで放送されていました。会場で「どのような成人になりたいですか?」インタビューされていた女性が「親が他人に自慢できるような人になりたい」と返答していました。それを聞いて、親の子育てが伺えますし、生きる力をしっかりと与えられた言葉のように思えました。

次のようなこともありました。認知症で自分を見失ったお年寄りに「いま誰に会いたいですか?」と尋ねると、ほとんどの方が「おっかさん」「お母さん」と答えていました。毎日、不安そうにしているお年寄りが、その言葉の後に見せる表情は母に抱かせている子どものようでした。

「親」そのものが、子どもには生きる力になるのではないでしょうか。親として、子が親を他人に自慢できるように努力する姿を子どもに見てもらいたいものです。

たとえ、目の前にいなくても、もう亡くなっていても、一度も見たことがなくても、親は子どもの心にしっかりと存在しております。

 

前園長(杉山均)から聞いた話を今回はご紹介しました。親として、または保育にかかわる保育者として、感じることや思うことがたくさんありました。子どもにとってを考え、いま感じたことや思いを行動にしていきたいと思います。